標準約款改正へ譲渡制限特約の方向性

国土交通省は2020年4月施行の改正民法の内容を踏まえて「建設工事標準請負契約
約款」の見直しを検討している。1日に中央建設業審議会(中建審)専門ワーキンググルー
プの第2回会合を開き、約款における譲渡制限の規定の方向性などを議論した。
譲渡制限に関する民法改正では、譲渡制限特約が付いていても債権譲渡の効力は妨げ
られないとされた。国交省は今回、債権譲渡により工事着手前に資金がほぼ全額調達でき
ることになると、適正な施工がなされない恐れがあると説明。また工事契約は双務契約であ
り、債権が譲渡された場合に請負代金債権の債権者(請負者)が工事完成の債務を負って
いるが、債権を譲渡した請負者が譲渡後に債務を履行し続けるか疑問が残ると指摘した。
建設工事では長期間の契約になる特殊性から、譲渡制限特約により「建設工事の適正な施
工」や「最後まで工事を完成させること」下請負人の保護、労務費や資材への前払金の適切
な利用などを担保しているため、これらの発注者の利益は引き続き保護することが必要との
考えを示した。
譲渡制限特約について委員からは「発注者にとって大きなメリットになる」「特約を担保す
る事項は残してほしい」といった意見が出た。
さらに国交省は建設工事の完成前には譲渡を認めるべきではないが、建設工事の完成
後や部分払い後は譲渡を認めてもよいのではないかとの見解を提示。請負代金債権のうち
、下請けに払う部分に関しては、性質上、譲渡された場合に下請けに対する円滑な支払い
に支障が生じるため、少なくとも公共工事では発注者と下請けの保護を図るという利益を確
保する必要があるとの論点を示した。
約款改正案は11月中にも取りまとめ、12月に開く中建審の総会を経て約款を改正し、新約
款の周知を図る見通しだ。
なお中建審では、公正な立場から建設工事標準請負契約約款を作成し、受注者、発注者
双方に実施を勧告している。

(2019.8.2.日本工業経済新聞より)